2014年11月9日日曜日

養育費の相場と現状

養育費とは、子供を養っていくために必要な費用(食費・衣服費・教育費・医療費など)の事です。子供のいる夫婦が離婚する際、多くの場合は母親が親権を持つ事になります。しかし、父親は親権が無くなったとしても、子供の親である事には変わりが無く、子供を育てていく費用は一緒に負担する必要があるのです。

養育費には相場があり、夫婦間での収入の差額によって金額が決まります。その計算方法は、東京・大阪の裁判官の共同研究で作成された養育費算定表に当てはめるのが一般的です。

【注意;PDFファイルです】http://mukyajim.net/youikuhihayamihyou.pdf

例えば、子供が一人のシングルマザーの年収が200万円で、元夫の年収が400万円のケースでは、月額2~4万円が平均相場になります。実際に厚生労働省の「平成23年度・全国母子世帯等調査結果報告」によると、養育費の平均は43,482円との統計です。子供が2人や3人と多い場合にはもう少し増える傾向にあるようですが、養育費だけで子育ての費用を賄うのは困難です。しかし、子供を良い学校に入れたいのでもっと多くほしいと要求しても、相場からかけ離れた額を貰える事はまず不可能です。

下のグラフは、厚生労働省の行った平成23年度の全国母子世帯等調査結果報告のデータです。現在でも養育費を貰い続けている人は、シングルマザー全体の20%弱しかおらず、実に6割以上の人が、離婚以来1度も養育費を受け取っていないのが現状です。


養育費を受け取った事がないシングルマザーが過半数も居る現状は、そもそも養育費について知識が無い事が理由でしょう。そして、養育費や法律に詳しい人が身近にいる事は少ないので、相談相手が居ないという悩みが多いようです。下のグラフは同じく平成23年度の全国母子世帯等調査結果報告より。


養育費の取り決めをしていない事に対する理由として、シングルマザー側の回答で最も多いのが「夫に支払い能力が無いから」でした。これはまだ分かりますが、続く「相手と関わりたくない」や「交渉が面倒だ」といった理由は、明らかに馬鹿げた行動です。シングルマザーの人の中には、女性特有の『その場の感情まかせに行動する』タイプの人が多く、離婚してからお金に困るというパターンですね。


貴方一人なら好き勝手に生きれば良いですが、子供の人生も背負っているのですから、一時的な感情に流されるのは問題でしょう。自分のおかれている現状を認め、嫌なことであっても元夫から取れるものは取っておくよう、ちゃんと養育費の取り決めをしておくことが必要なのでは?

相場並の養育費でも生活できる金額にはならない


養育費の詳細は、まず夫婦間で話し合って決めますが、合意しなかった場合は、離婚調停に発展する事になります。それが調停離婚と呼ばれるもので、家庭裁判所で離婚に関する取り決めをする制度で、夫婦に男女一名ずつの調停委員を加えた計4名で、養育費(他に親権や慰謝料など)について話し合うというものです。
調停離婚の費用と手続き

調停でも養育費の金額が合意できない場合は、裁判で争われる事になります。しかし、ほとんどの場合は離婚調停で決着するため、裁判にまでもつれ込むケースは滅多に無いのが現状です。

離婚におけるお金のやりとりには慰謝料もありますが、これは夫婦間での精神的な苦痛などに対して支払われる損害賠償金であり、養育費とは全く別の物です。また注意点として、養育費の請求には時効が存在しませんので、しばらく別居をした後に離婚に至ったという場合は、別居中の期間を遡って、養育費の請求が可能です。

養育費は、一般的に子供が成人するまでの期間が対象です(大学進学まで含めて考えるべきという判例もあります)。子供が成人するまでにかかる費用の相場は、全て国公立の場合で約1300万円、私立の場合では3000万円以上にもなると言われています。父親からの養育費が月額2万円だった場合、20年間で合計480万円にしかならず、残りは全て母親が支払う必要があります。シングルマザーの収入(平均年収)はわずか181万円というのが現状ですので、これだけ生活に困窮した状況で子供を育てていく事は極めて困難なのです。

しかし、月額2万円でもしっかり支払ってくれるのはまだ良い方で、離婚した夫が養育費の支払いをしない(またはしなくなる)ケースは非常に多いです。予め強制執行の取り決めをしておく事で、養育費を貰い損なう危険性は減ります。いずれにせよ、養育費の相場は月額2~4万円程度ですから、仮に貰えても生活が楽になる金額ではない事は、十分覚悟しておくべきです。