2014年10月5日日曜日

離婚の慰謝料は期待できない

子供を持つ母親がシングルマザーになるケースの約8割が、離婚によるものです(残りが未婚出産や夫の死別)。夫の浮気やDVなど、原因が明確に相手側にある場合は、裁判を起こして慰謝料を請求する事が可能です。慰謝料とは、自分が受けた精神的な苦痛に対して、加害者に損害賠償を請求出来る制度の事です。既婚女性の中には、この慰謝料を目当てに離婚を決める人もいるようですが、この考えはやめておいた方が良いです。慰謝料は女性が考えているより、遙かに少ないのが現実だからです。

慰謝料の金額は裁判によって決定されますが、基本的に過去の判例が重視されます。簡単に言うと、夫の浮気が原因の離婚の場合は○○円、DVが原因の場合は△△円など、慰謝料の相場はあらかじめ決まっているという事です。もし、あなたが1000万円分ぐらいの被害を受けたと感じていたとしても、過去の似たケースで100万円が適切だと判断されていれば、あなたも100万円しか貰えないのです。離婚による慰謝料の相場は原因によって様々ですが、一般人の場合は概ね100~300万円程度です。この金額は、どんな弁護士に依頼しても、また裁判官が誰であっても大きく変わる事はありません。

テレビで芸能人の離婚が報道されると、慰謝料が数億円と公表される事もしばしば見受けられますが、こうした金額を参考にしてはいけません。慰謝料は元夫の年収をベースにして算出されるため、稼ぎが多い芸能人の場合は膨大な金額になる事もあるというだけなのです。普通のサラリーマンの夫から、こんなにも慰謝料を貰える事は絶対にあり得ません。

しかも、夫が慰謝料を必ず支払ってくれるとは限らない点にも注意が必要です。離婚による慰謝料請求は民事裁判で行なわれますが、この判決には「民事不介入」という原則があり、警察は基本的に関わらないと決められています。ですから、夫が慰謝料の支払いを拒否したとしても、それで警察に逮捕されるような事はありません。いくら裁判で慰謝料の支払いが言い渡されていたとしても、夫に逃げられたら回収は難しいのです。

※有名な話として、ネット掲示板2ちゃんねるの創始者=西村博之氏は、何度も名誉毀損で訴えられて損害賠償の判決を喰らっていますが、ずっと支払い拒否して逃げ続けています。古い裁判はもう10年以上経っていますが、それでも西村博之が警察に逮捕されるに至っていません。力づくで取り押さえたら、今度は暴力沙汰だと逆に訴えられかねません。民事裁判というのは、敗訴した相手に逃げ回られたらどうしようもないという、欠陥だらけの制度なのです。

こうした事態に陥らないために、強制執行という、裁判所の力によって相手の財産を差し押さえる仕組みがあります。慰謝料だけでなく、子供の養育費の未払いにも適用出来ます。夫の貯金が少ない場合でも、自動車や不動産といった財産や、毎月の給料(手取りの4分の1が上限)なども差し押さえられます。

養育費の相場と現状

強制執行は、予め離婚給付契約公正証書を作成しておくとスムーズに進みます。公正証書とは、法務大臣が任命する公証人が作成する公文書の事で、裁判の判決と同等の効力が認められています。つまり、公正証書で「慰謝料の支払いが滞った時は直ちに強制執行に応じる」という同意を得ておく事で、慰謝料が支払われなかった場合には、すぐさま強制執行に踏み切る事が出来るのです。離婚の取り決めをした際には、必ず公証役場へ出向いて、公正証書を作成しておくべきです。

ただし、前述の通り慰謝料の裁判は民事不介入なので、警察には頼れませんし、シングルマザーが自ら元夫から力ずくで慰謝料を回収するのは難しいです。故に、最初から慰謝料をあてにして離婚するのは得策ではないのです。